それは、日頃のお客様のお叱りから始まりました。 「大事な結婚指輪が買って1ヶ月も経たないのに、こんなに変形してしまったの。」 すぐにお直しして差し上げました。さらにお客様にアドバイスさせて頂きました。 「重たい荷物は持たないようにして下さい。又、自転車のハンドルはギューと握らないようにして下さい。」 お客様は不満げなご様子でした。 このようなご相談は時々ありました。 あるとき、「1年前に買ったマリッジリングがバラバラになった。」と血相を変えてお客様が飛び込んで来られました。 見ると、プラチナの部分と18金の部分が離れて2個の指輪になっていました。 驚きました。工房で直しましたが、お客様からお叱りを受けました。 2人の愛の絆としてふさわしい結婚指輪探しが始まりました。 造りにこだわりのあるメーカーをあたってみました。 お客様の購買代理人として徹底して探求しました。 一生涯、毎日着けていても耐えうる、愛の絆の指輪を求めて。 工房やメーカーに嫌がられました。 どうやって造っているのかを聞き出そうと、情報の公開を求めましたが、曖昧な回答が多いものでした。 確かに、製造のノウハウは作り手の命です。行き詰まりました。 その時、一人の日本人に出会いました。 その人は、取り扱っている指輪について、目を輝かせ熱く語っていました。 航空機にも携わったことがあるその男性は、素材に対して詳しく説明してくれました。 その指輪は鍛造製法から生まれたドイツのクリスチャンバウアーだったのです。 着け心地が、プロとして今まで経験したことのないずっしり感とフィット感がありました。 ドイツのマイスター達とハイテクノロジーが織り成す技の結晶でありました。 これだと思いました。 それでも、更なる確信を持つために、工場のあるドイツの「ヴェルツハイム」に行ってみました。製造工程を全て公開してくれました。 その鍛造法は、地金の合金から始まるものでした。 各工程での職人達は、誇らしげに自分達の仕事を説明してくれました。 単に地金を叩いて、地金を強くしていると思っていましが、奥が深いことが解りました。 叩き、圧縮し、削り出す、完全鍛造製法でありました。 ここまで製造を公開してもいいものでありましょうか。 彼らは、真似できるものならしてみろというスタンスなのでありましょう。 この会社は、飛行機のドアにあるスプリング、米国の NASA がロケットの発射台に使うスプリングや、ベンツやBMWの部品も製造していました。 結婚指輪(マリッジリング)はこれだと思いました。 こうして、一生涯身に付けるのに、ふさわしい指輪−クリスチャンバウアーが見つかったのです。 |
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